WebサイトやEC運営をしていると、「まさか」のトラブルに直面する瞬間があります。

こんにちは。
Webディレクター歴20年以上。悩めるディレクターさんやWEB担当者さんが、明日から実践できてランクアップできるヒントを届けている友澤(ともざわ)です。
先日、当ブログの読者からこんな相談をいただきました。
「カートシステムの不正アクセスで障害が発生し、現場が大混乱。
マニュアルがなく、報告・判断・共有がバラバラになってしまいました。」
こうしたトラブルは、ECサイト運営の現場では他人事ではありません。
でも意外なほど、「障害対応マニュアル」を事前に整えている会社は少ないのが実情です。
なぜか?
障害が起きてからじゃないと、何を整備すべきか分からないから。
そこで今回は、ChatGPTを活用してゼロから障害対応体制を整える流れを紹介します。
この記事の前編では、「想定される障害の洗い出し」と「現場対応設計の始め方」を中心に解説します。
この記事でわかること
- 自社サイトで起こり得る障害の洗い出し方
- 障害レベル(軽微〜重大)の定義と整理方法
- 障害発生時に必要なルールページの作り方
- 告知文を即時に公開できる仕組みづくり
- GPTを活用した効率的なマニュアル構築プロセス
目次
まずは現状をチェックしてみよう ~障害対応の準備状況診断~

いきなりマニュアルを作るより、
まずは“自社がどこまで準備できているか”を可視化するのがおすすめです。
下のチェックリストで現状を振り返ってみましょう。
| 障害レベル定義が明文化されている | □Yes / □No |
| 影響範囲を特定するチェックリストがある | □Yes / □No |
| 緊急告知用定型文が共有フォルダにある | □Yes / □No |
| SNS・サイト告知判断の基準がある | □Yes / □No |
| 定期的な障害想定訓練をしている | □Yes / □No |
「No」がついた項目が、このあとGPTと一緒に整えていく部分です。
まずは“どんな障害が起きうるか”を整理しよう
障害対応マニュアルづくりの第一歩は、想定リスクの棚卸しです。
最初は細かさよりも「抜け漏れがないか」を意識してリストアップしましょう。
では、GPTに頼んでみます。
プロンプト例
ECサイト運営者として想定しておくべき障害・不具合を、
発生源(インフラ/機能/外部連携/人的)の4カテゴリでリスト化してください。
各項目に「原因」「影響」「初動対応」を含めて表にしてください。
出力例
⚙ 機能(システム・アプリケーション関連)
| 障害内容 | 原因 | 影響 | 初動対応 |
| カート機能の不具合 | コード変更・リリース不備、JSエラー | 購入が完了できない | ログ調査、直前リリースのロールバック、ユーザー告知 |
| 在庫連動の不整合 | バッチ処理遅延、DB更新エラー | 在庫切れ商品の販売、返品対応発生 | 該当商品の販売停止、在庫同期再実行 |
| 決済処理エラー | API不具合、決済設定ミス | 決済できない・二重請求 | 決済代行会社の稼働状況確認、ログ確認、取引停止処理 |
| メール送信エラー | SMTPサーバー障害、スパム判定 | 注文確認メール等が未送信 | メールログ確認、再送処理、顧客への案内 |
出力されたリストを、自社の実情に合わせて調整します。
使用しているカート、決済システム、APIなどを追記していくと、精度が一気に上がります。
障害レベルを定義して、判断軸を作ろう
障害の中には、「今すぐ対応が必要なもの」と「数時間以内でOKなもの」があります。
判断を迷わないために、あらかじめ障害レベルを3段階で定義しておきましょう。
では、GPTに頼んでみます。
プロンプト例
ECサイトの障害をL1〜L3の3段階で定義したいです。
各レベルで「想定事象」「影響範囲」「報告先」「対応方針」を表でまとめてください。
出力例
⚠ ECサイト障害レベル定義表
※この表は横幅が広いため、スマートフォンでは一部見づらい場合があります。
できればパソコン表示でご確認いただくと見やすいです。
| レベル | 想定事象 | 影響範囲 | 報告先 | 対応方針 |
| L1(重大障害) | ・サイト全体がダウン/アクセス不能 ・決済やカート機能が利用不可 ・データベース障害による注文処理停止 ・セキュリティインシデント(情報漏洩など) | ・全顧客への影響 ・売上の即時停止 ・企業信用リスク | ・経営層 ・システム責任者 ・外部ベンダー(ホスティング/決済) | ・即時障害対応チームを招集 ・SNSやサイト上で障害告知 ・原因特定・復旧を最優先 ・経営層へ逐次報告と再発防止策策定 |
| L2(中程度障害) | ・一部機能(注文履歴、会員登録、メール通知等)の不具合 ・外部API連携(配送、在庫)が断続的に停止 ・表示崩れや遅延 | ・一部ユーザーへの影響 ・購買体験低下 ・短期的な売上減少 | ・システム担当者 ・CS(カスタマーサポート) ・外部ベンダー(該当連携先) | ・影響範囲を調査し暫定対応を実施 ・障害情報を内部共有(必要に応じ顧客通知) ・再発防止のための修正計画を立案 |
| L3(軽微障害・運用レベル) | ・商品情報の誤登録、文言・画像の誤表示 ・メールテンプレートの誤記載 ・社内オペレーションミス(在庫更新遅延など) | ・限定的なユーザーまたは一部商品のみ ・サイト全体の稼働に影響なし | ・運用担当者 ・チームリーダー | ・該当箇所を迅速に修正 ・再発防止のためのチェック体制見直し ・特に影響があれば顧客へ個別連絡 |
出力された内容を自社向けにカスタマイズして、「自社定義」として保存します。
リストを“レベル別”に整理する
ここまでで「障害リスト」と「障害レベル定義」の2つができました。
次はこの2つを組み合わせて整理します。
プロンプト例
添付(以下)の2つの情報をもとに分類してください。
【障害リスト】(STEP2で精査したもの)
【障害レベル定義】(STEP3で作成した表)
上記の定義に沿って、障害リストをL1〜L3に分類してください。
各項目に「影響範囲」「初動対応」「報告先」「告知要否」を加えて表にしてください。
GPTは、あなたが定義したルールに沿って自動で仕分けしてくれます。
出力された表をレビューして、最終判断を人が下す。これがベストな流れです。
各障害を「詳細ルールページ」としてまとめよう
一覧表が完成したら、1件ずつ詳細ページを作成します。
Notion等で項目番号をリンク化しておくと管理しやすいです。
プロンプト例
“カート決済エラー(L2)”の障害ルールページを作りたいです。
以下の項目を含めて表形式で出力してください:
障害名/発生原因(想定)/影響範囲/初動対応/報告ルート・責任範囲(自社+外部ベンダー)/自社担当部署、自社運用責任者名、担当者名/外部ベンダー 担当者名/顧客告知文(テンプレート)/告知媒体/再発防止メモ(※後日記入・記入日欄あり)。
下記の項目についてはこちらで記入しますので内容例は空欄で大丈夫です。
・自社担当部署、自社運用責任者名、担当者名
・外部ベンダー 担当者名
・再発防止メモ(※後日記入)
出力例 ※後日追記分含む
| 項目 | 内容例 |
| 障害名 | カート決済エラー(L2) |
| 発生原因(想定) | 外部決済APIのレスポンス遅延または通信断。 |
| 影響範囲 | 新規購入者・定期更新ユーザーに影響。購入手続き不可。 |
| 初動対応 | ログ確認・再現テスト → ベンダー報告 → 一時案内掲出。 |
| 報告ルート・責任範囲(自社+外部ベンダー) | 外部ベンダー→自社運用責任者(30分以内報告)。 自社発見時:CS→責任者→ベンダー(5分以内)。 |
| 自社担当部署、自社運用責任者名、担当者名 | ○○○○部 担当者/■■▲▼ 内線番号/0000 メール/aaa@aaaa.jp |
| 外部ベンダー 担当者名 | ▲■株式会社 担当者/●●■■様 電話番号/0000-000-0000 メール/aaa@aaaa.jp |
| 顧客告知文(テンプレート) | 「現在、クレジットカード決済において不具合が発生しております。ご不便をおかけし申し訳ございません。復旧次第、改めてお知らせします。」 |
| 告知媒体 | サイトトップ/メール/SNS/CS返信テンプレート |
| 再発防止メモ(※後日記入) | 記入日:2025年11月12日 ・API監視強化 ・アラート設定改善 ・CS再教育実施 |
💡 ポイント
障害対応は「社内だけで頑張る話」ではありません。
外部ベンダーが関わる場合は、“誰が・いつまでに・どのように報告するか”を
事前にすり合わせておくことが重要です。
告知文は“誰でもすぐに公開できる状態”にしておく
障害時、最も混乱するのは「正しい情報がすぐ出せない」ことです。
承認フローや更新手順が詰まると、数分で信頼を失うこともあります。
事前にやっておきたいこと
- 社内承認済みの告知テンプレートを共有フォルダに保管
- CMS更新手順書をまとめておく(誰が更新できるか明確に)
- テスト公開を事前に実施し、操作確認を済ませておく
- 代替担当者の手順書も併せて用意
プロンプト例
ECサイト障害発生時に顧客へ公開する告知文を管理する仕組みを設計したいです。
社内承認テンプレートの保管、CMS更新手順、公開権限の整理を含むチェックリストを出してください。
💡 ひとことアドバイス
告知文を「作る」よりも、「出せる状態」にしておくこと。
これがブランド信頼を守る最初の一手です。
ルールを“更新できる仕組み”にする
マニュアルは作って終わりではなく、更新されてこそ生きた資料になります。
- 更新タイミング:障害発生時 or 四半期ごと
- 担当者:EC運用責任者/CSチーム
- 更新履歴:Notionページ末尾に「日付・担当者・変更内容」を追記
プロンプト例
障害対応マニュアルの更新運用ルールを策定したいです。
「更新タイミング」「責任者」「記録方法」を含む簡潔なガイドラインを出してください。
まとめ:
障害対応マニュアルは、完璧を目指すものではありません。
“混乱を最小限にするための地図”を持つことが目的です。

GPTをうまく活用すれば、ゼロからでも確実に整備できます。
次回の後編では、「障害が起きた時、信頼を失わない報告とは?」をテーマに、
報連相・広報・信頼維持の実践を紹介します。
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最後までブログを読んでいただきありがとうございました!

