説明が伝わる人と伝わらない人。その差は1つだけ

説明が伝わる人と伝わらない人。その差は1つだけ

丁寧に説明したつもりなのに、「つまりどういうことですか?」と聞き返される。

資料もちゃんと作って、順を追って話したのに、打ち合わせが終わったあとで「認識が違っていた」と気づく。

何度説明しても伝わらないとき、「自分の話し方が下手なのかな」とか「もっと分かりやすい資料を作らないといけないな」と、説明の”うまさ”に原因を求めてしまいがちです。

でも、伝わらない本当の理由は、ほとんどの場合そこじゃありません。

話し方でも、資料のクオリティでも、論理の構成でもなく——相手との「前提のズレ」

これだけです。


こんにちは。
WEBディレクター歴20年以上。悩めるディレクターさんやWEB担当者さんが、明日から実践できるヒントを届けている友澤(ともざわ)です。

今回は、説明が伝わる人と伝わらない人の違いを「前提・認識・理解度のズレ」という構造で読み解いて、実務で使える考え方を整理してみます。

「伝わらない」はよくある場面で起きている

まず、あるあると感じてもらいやすいシーンをいくつか挙げてみます。

Webの専門用語が通じていなかった

「今のサイト、ファーストビューにCTAがないんですよね」とクライアントに話した。

うなずいてくれた。でも後から「ファーストビューってどこのことですか?」と聞かれた。

ずっと分かっているものとして話を進めていた。

自分の「当然」が相手には「当然」じゃなかった

「レスポンシブ対応をしておけば問題ないですね」と伝えた。

クライアントは了解してくれた。でも公開後に「スマホで見たら崩れてる部分がある」とクレームが来た。

「レスポンシブ対応=完璧に崩れない」とは限らないことは、こちらには当然の知識だったけれど、相手には伝わっていなかった。

結論より先に経緯を話してしまった

「このたびの修正なんですが、まず現状の構造として……それを踏まえて今回の影響範囲が……つまり、対応に1週間いただきたいんです」

聞いている側は、最初の2分で「で、何が言いたいの?」と思っていた。

なぜ説明は伝わらないのか——3つの構造的な理由

① 相手の「知識の前提」を確認していない

もっとも多いのがこのパターンです。

私たちの頭の中には、日々の業務で積み上げてきた「当然知っているはずの知識」がたくさんあります。SEO、CMS、IA、FV、KPI——これらはディレクターには当たり前の言葉でも、クライアントの担当者には初耳のこともある。

問題は、「相手がどこまで知っているか」を確認しないまま話し始めることです。

自分の知識レベルを起点にして話すと、相手の理解が追いつかない部分が必ず出てきます。でもクライアントは「分かりません」と言えないことも多い。うなずきながら、実は半分も理解できていない——という状態が静かに続きます。

② 情報の「順番」がこちら都合になっている

伝わらない説明のもう一つのパターンが、「情報の出す順番が相手の理解の順番と合っていない」ことです。

私たちは物事を考えた順、調べた順、資料を作った順に話しがちです。でも聞く側は「なぜこの話をされているのか」が分からないと、話の意味を理解するより前に「迷子」になってしまいます。

相手が最初に欲しい情報は、ほとんどの場合「結論」と「自分に関係があるかどうか」の二つです。これを最初に渡せると、残りの話がすんなり入ってきます。

③ 「理解した」と「腹落ちした」が混在している

「分かりました」は二種類あります。

一つは「内容は理解した」という状態。もう一つは「なぜそうするべきか、自分の中で納得できた」という状態。

説明がうまくいっているように見えて、後になって「やっぱり違う方向でお願いしたい」となるとき、多くの場合この二つが揃っていなかったことが原因です。

頭では理解できても、腹落ちしていないと人は動きません。そして腹落ちは、論理ではなく「自分ごと化」によって起きます。「御社の場合、こういうことが起きますよね」という具体的な文脈に落とし込まれたとき、はじめて「そうか、だからやるべきなんだ」になります。

やってしまいがちな失敗

情報を増やせば伝わると思ってしまう

「もっと詳しく説明すれば分かってもらえるはず」と、次の打ち合わせで資料をさらに厚くする。

でも、伝わらない原因が前提のズレや順番の問題にある場合、情報を増やすほど混乱します。「たくさん話してくれたけど、結局何が言いたかったんだろう」という状態になる。

専門用語を言い換えずに使い続ける

「カスタマージャーニー」「ペルソナ」「UX」「エンゲージメント」——クライアント向けの打ち合わせでこれらをそのまま使い続けていると、相手はどこかのタイミングで「ついていけなくなって」います。

言い換えを「手間」と感じてしまうと、相手の理解が置き去りになります。

自分が「正しいこと」を証明しようとしてしまう

「なぜこの設計が正しいか」を丁寧に論理立てて説明する。でも相手が聞きたいのは「正しいか」ではなく「自分たちにとって良いことが起きるか」だったりします。

正しさを伝えようとするほど、相手との距離が開いてしまうことがあります。

伝わる人がやっていること

話す前に「相手がどこにいるか」を確認する

伝わる人は、説明を始める前に相手の理解レベルを確認します。

「○○については以前お話したことがありますが、改めて確認させてください」「この辺りは普段から意識されていますか?」という一言で、相手がどこから話を聞いているかが分かります。

相手の「今いる場所」から話を始めることが、伝わる説明の出発点です。

結論を最初に出す

「3点お伝えしたいことがあります。まず結論から言うと、○○が必要です」——このように始めると、相手は「何の話か」を理解した状態で話を聞けます。

結論が最後に来る説明は、相手にとって「どこに向かっているか分からないまま歩く」ようなものです。終点を先に見せるだけで、途中の道のりの見え方が変わります。

「翻訳」をする

ディレクターに求められているのは、専門知識の伝達ではなく「翻訳」です。

技術的な正確さより、「相手の言葉で話すこと」を優先する。これが伝わる人と伝わらない人の、最も根本的な違いだと思っています。

「レスポンシブ対応」→「スマホでも崩れずに見られるようにする対応」 「ファーストビュー」→「サイトを開いたとき最初に目に入るエリア」 「CTA」→「問い合わせや購入につながるボタンや導線」

一度こう言い換える習慣がつくと、説明が驚くほど通りやすくなります。

「腹落ち」を確認する問いを入れる

「ご理解いただけましたか?」という確認は、相手が「はい」としか言えない問いです。

「この内容、社内でご説明される際に使いやすそうですか?」「ここまでで、何か引っかかるところはありますか?」という聞き方に変えると、本当に腹落ちしているかどうかが見えやすくなります。

ここで出てきた「引っかかり」を拾うことが、後のすれ違いを防ぎます。

ビフォーアフターで見てみる

場面:スマホ対応の必要性を説明するとき

伝わりにくいバージョン(Before)

「現在のサイトはレスポンシブ未対応で、モバイルファーストのトレンドに対応できていません。ユーザーエクスペリエンスの低下が離脱率に影響している可能性があります。早急な対応を推奨します」

伝わりやすいバージョン(After)

「今のサイト、スマホで開くと文字が小さくてボタンも押しにくい状態になっています。アクセスの6割がスマホからのユーザーなので、このままだと『見にくいな』と感じて離れてしまう人が多い可能性があります。まずスマホ表示だけ直しませんか?」

言っている内容はほぼ同じです。でも後者は「自分たちのサイトで起きていること」として伝わります。前者は「正しいことを言われている感」が強く、腹落ちしにくい。

この違いが、翻訳力です。

AIに伴走してもらうなら

説明の準備や言い換えの壁打ちとして、AIはかなり使いやすい相手です。特に「相手目線への翻訳」と「説明の順番の整理」は、AIが得意とする作業です。

専門用語を言い換えてもらう

「このWeb用語を、Webの知識があまりないクライアントに説明するとしたら、どんな言葉で伝えればいいか教えてください」と聞くだけで、いくつかの言い換えパターンを出してくれます。

プロンプト例:相手目線に変換する

Webディレクターとして、クライアントに説明する文章を作りたいです。

以下の内容を、「Webの知識がほぼない中小企業のWeb担当者」に伝わるように言い換えてください。
専門用語はできるだけ使わず、具体的なイメージが湧く言葉で書いてください。

【伝えたい内容】
(例:現状のサイトはページ読み込み速度が遅く、Googleの評価が下がっている可能性があります。Core Web Vitalsの改善が必要です)

「結論ファースト」の構成に直してもらう

「以下の説明を、結論から始まる順番に並び替えてください」とAIに頼むと、情報の順番を整理してもらえます。書いた文章を渡すだけで、相手が理解しやすい順番に直してくれます。

AIはあくまで整理のサポートです。最終的に「この言葉でこのクライアントに届くか」の判断は、現場を知っている自分にしかできません。でも準備の段階でAIと壁打ちするだけで、打ち合わせでの言葉の出方がかなり変わります。

まとめ

説明が伝わらないとき、問題は「話し方」や「資料の質」ではないことがほとんどです。

  • 相手の知識の前提を確認していなかった
  • 情報の出す順番がこちら都合になっていた
  • 「理解した」と「腹落ちした」が揃っていなかった

このどれかが起きているだけで、どれだけ丁寧に説明しても「伝わった感じがしない」状態が続きます。

ディレクターに必要なのは説明力よりも、翻訳力と整理力。相手が「今どこにいるか」を確認して、相手の言葉で、相手の順番で話す——この積み重ねが、「この人の説明は分かりやすい」という信頼につながります。

「また伝わらなかった」と感じる打ち合わせがあったら、ぜひ「相手との前提は揃っていたかな?」という問いを持ち帰ってみてください。そこから振り返ると、次に何を変えればいいかが見えてきます。

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