「YESマン」をやめるための処方箋
こんにちは、フリーランスWEBディレクターの友澤です。
WEBディレクターとしてクライアントとの窓口に立つと必ずなんらかのご要望をいただくことがありますよね。
- (デザイン作成後なのに)社長の勝負カラーだから黄色をメインカラーに変えて。
- (プログラム開発完了後に)ここにはこのデータを出してもらいたい。
なんて重い要望がライトな雰囲気でいただいたり。
簡単なものならまだ良いのですが、重い要望についてもクライアントからなので「わかりました!」って受けて帰った結果、制作チームのみんなに怒られたという経験は一度や二度ではないでしょう。
このパターンが何度か続くと「あいつはYESマンなんだよな~。断って来いよ~。」という制作チームからの悪い評判が立つことがあります。もっと良くないのは、一度は受けた要望に対してお断りを入れることになりますので、クライアントとしても「やるって言ったのに、上司に言っちゃったよ。」と納得がいかず信頼関係が崩れることにもなります。
これは私のことですが、もっともっと良くないのは言われ続けるうちに「断ることがディレクターの義務」になってしまって軽微でかつユーザーのためにはやった方がいいことでも意固地になってやらないという「YESマン」よりもたちの悪い「NOマン」になってしまったこともありました。
今回は「YESマン」問題を解決する方法をご紹介します。
良かったら読んでみてください。
※「マン」という表現については、よい言い回しではありませんが他に良い言葉がなかったので伝わりやすさ重視で。
当記事のポイント
「YESマン」にならないテクニック3選
まず最初に、お悩みの方のために「YESマン」にならないための3つのテクニックをご紹介します。実施する難易度が低く効果は高いのでぜひ一度使って確かめてみてください。
1、即答で飲まない
「YESマン」にならないためのテクニックその1は「YESを即答しない。」です。
当たり前だろ!とお叱りをいただきそうですが「YESマン」に悩んでいる人、さらに悪化して「NOマン」になってしまっている人にはこれができていない人が本当に多いです。
打ち合わせの席ではクライアントと直接対峙していることが多いので「急いで結論を出さなければならない。」とプロジェクトを背負っている身としては気負っちゃいますよね。もちろん、気負う部分はあってよいのですが悩んでいるならやってはいけません。
問題の本質は「なんでも」YESと言ってしまったことにより後々プロジェクトに支障が出ることです。つまり「支障が出るかどうかの確証がないことに対してYESを言う」から問題の種になるのです。ですから、まず即答を避けましょう。
と言われても「即答しないなんて難易度高いじゃん。」と思われた方々。
そもそも、打ち合わせの席でクライアントに即答する必要がどこまであるのでしょうか?打ち合わせは決める場所ですから決めることは必要ですが、即時即答の必要がある議題がどのぐらいあるかよぉ~くよく考えてみてください。
究極クライアントに「すぐに回答もらえないと困るんだよ。」と言われると急ぎに感じると思いますが、「いついつまでに回答します。」とだけ伝えて持ち帰って早めに回答できれば万事問題になることはありませんし、間違った方向に進むことを止められるのであればプロジェクト進行に関しては大きくプラスと言ってもよいと思います。
なんなら一つも答えず持ち帰る打ち合わせがあっても私はよいと思うのです。「それではディレクターとしての威厳が、、!」という方は続く2、3を読んでください。
2、自分でできることまでしか即答しない
「YESマン」にならないためのテクニックその2は「即答できることだけYESを言う。」です。もちろん「NO」も含みます。
少し乱暴に「・・・なんなら一つも答えず・・・」と書きましたが、実際のところ打ち合わせの場で一つとして確実な回答ができない状況はないと思います。しっかり答えられる要望・課題については即答してください。それだけで「ディレクターとしての威厳」(←これを威厳とは私は思いませんが。)は守れますし不確実なことをクライアントに回答して混乱を招くことも起こりません。
決めるべき会議の席で不確実ことを即答することはプロジェクト全体の大きなマイナスになります。プロジェクトが進めば即答できる範囲も広がりますし、経験を積めば判断できる深度も深くなっていきますので悩んでいる方は勇気と自覚を持って気軽に持ち帰りましょう。
3、深呼吸をする
「1、2が簡単にできないから悩んでるんだよ!」という声が聞こえてきました。
では最後に、「YESマン」にならないためのテクニックその3は「深呼吸をする」です。
「YESマン」が問題を起こすケースはほとんどの場合打ち合わせ=クライアントと対峙している状態で起こります。それは「クライアントの圧に負けてしまう」からです。メールやプロジェクト管理ツールなどで来ている質問や課題は制作メンバーに確認したり調べてから回答できますので即答が必要にはなりません。私もそうでしたが、打ち合わせでは対峙しているため即答しなければという圧に負けてしまって「YES」を言ってしまうんですよね。「事件は会議室で起こる」のです。
WEBディレクターが打ち合わせゼロというパターンは経験したことがありませんのできっと皆さんも気まずい圧を味わったことがあると思います。気負えば気負うほど緊張して、ますます自分で自分に圧力をかけてしまうことで無理な即答をしてしまうのです。「気負うな!緊張するな!冷静に!」と言われてもなかなか簡単にはいきませんよね。そんな時は簡単です。
「深呼吸」をしましょう。
打ち合わせの席なのであまり長くは取れませんが「3秒吸って、3秒かけて吐く。」をやってみてください。私の経験上このぐらいは問題ありません。頭の中で数を数えながら「3秒吸って、3秒かけて吐く。」です。数を数えながらが良いと思います。
やってみると深呼吸をやる前はクライアントの顔しか見えなかった状態から、後ろの壁に掛けてある「絵」が見えるようになります。壁が見えるようになったら1、2を意識して議題に戻りましょう。
何かの事件で謝罪会見を行っているわけではありません。止まっていいです。自分が気負っているかどうかを確かめるきっかけにもなりますのでちょっと何か違和感を感じたら
とにもかくにも「深呼吸」を思い出してください。
くれぐれも、あまりに長く息を吐くと溜息みたいに見えてしまうのでそこは注意してくださいね。
「YESマン」になってしまうことが問題ではない?
冒頭「YESマン」が悪いような表現で書いてきましたが本当にそうでしょうか?一度疑ってみようと思います。
悪そうなイメージを一旦捨て去ってフラットに「YESマン」を考えてみましょう。
「YESマン」ってどんな人?
検索すると「YESマン」とは「何を言われても「はい,はい」と目上の人の言葉に無批判に賛成する者。追従者。」と書かれています。これは上述した「断って来いよ~」と言われるタイプのWEBディレクターを指す言葉と合致します。
一般的に「YESマン」なWEBディレクターがどんなものかと言うと以下のような特徴がありそうです。
- クライアントからの要望はとりあえずなんでも受け、
- 制作チームから指摘が出たらそれもなんでも飲み込んで、
- クライアントへはお断りの連絡をして落胆され、
- 制作チームからは低く評価される。
確かにこのイメージだと悪く聞こえ、なるべきではないWEBディレクター像に当てはまってしまいます。
こんなに悪いイメージの「YESマン」ですが、本当に「YESマン」は悪いのでしょうか?
実は、私はそうは思ってないのです。
人気の「YESマン」の魔法
私が一緒に仕事をしたWEBディレクターの印象に残っているお話です。仮にAさんとします。
Aさんはそのクライアントを担当し始めてから半年程度でしたが、その時のクライアントから「Aさんはいいね~。断らないのがいい。」と高い評価を得ていました。「断らない」というと「なんでもYES」のディレクターみたいに見えますし問題も多く起こすのではないか?と疑ってしまいますよね。
実際にAさんがほとんど「NO」を即答している姿を見たことがありません。ですが、Aさんの「YES」が起因の問題を起こすことはなくクライアントからも高評価を得ていたのでどんな魔法なのかを気になって観察してみたのです。そして発見したのです、至極当たり前のことが魔法のように見えていたことを。
Aさんの良い「YESマン」の魔法はこうです。
- クライアントとの打ち合わせの席で「YES」を即答する。
- 持ち帰って各所と調整、確認する。
- NGだったら別の方法を考えるかお断りする。
当たり前のことでびっくりしたと思いますがこれが高評価の理由でした。
聞いてみると「まだ半年で何もわからないからまず受けてきてチームで検討することにしただけです。わからなさすぎるからこうするしかなかった。」と言っていました。確かにこの案件はシステム開発を含む大規模プロジェクトで短い期間ですべて理解してすべてを即答するのは難しかったでしょう。
「それだと結局断ってるものもあるんじゃない?」そうなんです。断っている「YES」もあるのです。上述した「断ることでクライアントの信頼をなくす」はずなのです。ところがそうならなかった理由があるのです。それが「別の方法を考える」ができていたことです。
前任の担当者はシステムを理解していたため工数・工期・影響範囲が大きいようであればまず「NO」を即答しておりクライアントはそのことに不満が持っていたそうです。自ら出した改善要望に「NO」を突き付けられるストレスからクライアントを解放したことが高評価の理由でした。
この例から私は「YES」を即答することが悪いことではなくその後の当たり前の対応がしっかりできていればまったく問題はない、むしろ、今あなたが「YESマン」なのであれば彼のような評価を得られる可能性があるということだと考えました。また逆に正当であったとしても「NO」でクライアントの要望をあけすけに否定すべきではないことも体に染みて理解でき、以降のクライアントとの付き合い方をよりよく変えられた良い経験でした。
「YESマン」って本当に悪いのか?
悪いイメージの「YESマン」ですが、本当に「YESマン」は悪いのでしょうか?
「YESマン」なWEBディレクターを例になにが悪いのかを突き詰めて考えてみると答えは簡単です。
「なんでも」YESと言ってしまうことですよね。
「なんでも」という枕詞があると悪いイメージになってしまうんです。「クライアントからの要望」「制作チームからの指摘」の全てが的を射ている内容であれば全て「YES」即答で全くもって問題はないわけです。
前述のAさんはクライアントの要望に主眼を置いてなるべく応えようとしました。その結果が「YESマン」でありながらも高い評価を得たことを考えれば当たり前の対応ができていればクライアントの関係強化という点で良い結果を生んだと言えるのではないかと思っています。
目指すは最強の「YESマン」
ここまで「YESマン」を下げたり上げたりしてきましたが、私が目指すのは最強の「YESマン」だと思っています。ここではそんなお話を。
「YESマン」にならない方法だったのでは?
「YESマン」にならないテクニックをお伝えしてきましたが上述したように問題なのは「YESマン」ではなく「なんでも」YESと言ってしまうことでしたよね。つまり正しく最良を判断した「YES」即答であれば問題にはならないのです。
私が目指しているのは正しく最良を判断をした上でクライアントのご要望を叶えることができる最強の「YESマン」です。
クライアントはやっぱり「YESマン」が好き
これまでのなんでも「YESマン」のことではありません。確かになんでも言うことを聞いてくれて反論の一つもなく徹夜してでも赤字になってもやり遂げる「YESマン」を好きなクライアントはゼロではないでしょうし、それが当たり前と思っている人もいます。しかし、プロジェクトはもちろん会社を破綻させてしまうような悪い「YES」マンのことではありませんし、そのようなクライアントであれば早めにお別れすることをお勧めします。
前述のAさんは「YESマン」であることでクライアントから高い評価を得ていました。それは、「YES」を即答することでクライアントの要望に対して頭ごなしに即否定することなく要望を生かした別の提案をも考える姿勢でした。
クライアントも人ですから、出してくる改善要望はWEBサイトを良くしていきたいという気持ちからのものです。否定せず、まず検討しますと持ち帰ってくれるWEBディレクターが好きになりますよね。たとえ、その改善が実現せずともです。
「YESマン」になることができれば、クライアントから「あの人なら何とか考えてくれそう」な期待感を持っていただけます。
改善要望を生かす最強の「YESマン」
私の目指す最強の「YESマン」はクライアントからの改善要望に対して以下のような力を持って対応できているWEBディレクターだと考えています。
- プロジェクトの全容を詳細につかんでいる
- 改善要望の趣旨を慮ることができる
- 「YES」を言う根拠が明確に説明できる
- 改善要望の趣旨に沿って別の方法も提案できる
- クライアントの個々人の立場を慮ってバランスの良い落としどころを提示できる
- なによりユーザーの利便を最重要に判断できる
- それでも判断がつかないものは持ち帰り判断ができる
読んでいただいてお気づきの方もいらっしゃると思います。これらが実現できたら「NO」って言ってないんですよね。
改善要望がそのままでは効果が薄い・ズレているなどの問題点があっても「NO」を言ったりしません。クライアントは本業ならではの知見をお持ちですから実現方法は正しくなくても改善要望の趣旨は生かすべき意義を含んでいることが圧倒的に多いです。この趣旨を理解できれば望む効果を得られる別の方法をWEBのプロとして提案できます。つまり「YES」です。最後の持ち帰り判断をしたとしても検討という対応を間に挟むだけなのでこれもクライアントからは「YES」と映っています。
これが私の考える最強の「YESマン」です。
少しマインドの話
「YESマン」の悩みの本質はなんだろう?というお話をしましょう。
私が考えるこの悩みの本質は「プライド」だと思っています。詳しく言うと「プロジェクトを預かるWEBディレクターとしてのプライドを持って打ち合わせに臨み、クライアントとのディスカッションを経てやり遂げる宣言をしたのに断ることによる自分への評価と軽率な自分自身に対するストレス」ではないかと。
・断ることはめんどくさく、しんどい。しかも一度「YES」と言ってしまっている。
・メンバーに説明するストレス
・メンバーからの「はぁ?」という評価
・クライアントからもメンバーからも信頼をなくしたかっこ悪い自分。
・上司からもよくない評価になりそう
私自身は今でもそうですが、WEBディレクターとしての自分への期待というはありますしこうありたいという願望や向上心は誰でも持っていますよね。むしろ持っていなければこの先の成長も見込めません。しかし、その自分への期待とプロジェクトの進行とは別物と考えるべきです。
自分の願う姿とのギャップという表面的な悩みの本質のさらに深いところにある「威厳」「プライド」とか「かっこ悪い」などという意識はプロジェクトのここぞというタイミングでは捨てられる自分だといいな~と思うのです。もっと言うと捨てるという意識すらない状態になれるのが理想的なWEBディレクターじゃないかと。
そもそもそれらは感じさせるものではなく感じてもらうものですから。
まとめ
今回は「YESマン」にならない方法についてご紹介するとしましたが、最後は「YESマン」になろう。という締めとなってしまってすみません。
- なりたくないのは「なんでも」YESマン
- なりたいのは「最強の」YESマン
というのがまとめとなります。
クライアントからの期待と信頼をしっかりと獲得しながら、最強の「YESマン」になれれば制作チームからの信頼も得られて一石二鳥です。昨今のWEB制作現場は考慮範囲がどんどん膨らんでおり、また分業化が進んでいるため、私はWEBディレクターが一人で背負える業務範囲はせまいと自覚しています。だからチームのみんなに頼りますし、クライアントも巻き込んでみんなでプロジェクトを成功させようという気持ちで取り組んでいます。
自分だけで何とかしなきゃと気負わず人に頼りながら最強の「YESマン」となり、プロジェクトの成功を見つめていきましょう。
WEBディレクター養成のお悩みにも
友澤企画のご紹介
当ブログを運用する友澤企画はWEBサイトの構築を主軸にプロモーション、マーケティング、ブランディング、WEBシステム開発まで課題解決に向けた総合的なコミュニケーションを展開しています。WEBサイトの制作・提案案件やPDCA運用などの実業務でも、WEBディレクターの養成に関するご相談も、まずは雑談からお気軽にご相談ください。